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【研究調査】化粧品でアクネ菌が増える?
~水溶性高分子編~2009.08.26

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌資化性試験を行っています。資化性(しかせい)とは「微生物が、ある物質を栄養源として利用し、増殖できる性質」を示す言葉です。本試験の目的は、物質が微生物に与える影響を調査することにあります。
第一段階として、化粧品に配合されている保湿剤のアクネ菌に対する影響を調査しました。今回の試験では、第二段階として、水溶性高分子がアクネ菌の増殖にどの程度影響を与えるのか調査しました。

水溶性高分子とは?

水溶性高分子とは、水に溶解するとき分子の周りに多くの水を包含したヒドロゲルを形成するため、水溶液の粘度を著しく増大させることが出来ます。化粧品に用いられている水溶性高分子の種類は、多くのものがあり、植物系のローカストビーンガム、動物系のゼラチン、微生物系のキサンタンガム、合成系のカルボキシビニルポリマーなど多くのものが知られています。これらは、化粧水、ゲル、美容液、パック、シャンプーの粘度を出し使用感をよくしたり、クリーム、メークアップ製品の安定性を保つためなど市場にある様々な化粧品に利用されています。

各種水溶性高分子の資化性

各種水溶性高分子がアクネ菌の栄養源となりうるのかを検討するために、水溶性高分子をアクネ菌に与えてその増殖率を測定しました。使用した水溶性高分子は、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、褐藻エキス、ローカストビーンガム、アルギン酸Na、ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムとなります。

※CHH:塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース

無添加(図中の一番左)を100%とし、水溶性高分子を加えた場合のアクネ菌の増殖率を比較しました。
ペクチン、カルボキシビニルポリマー、褐藻エキス、ローカストビーンガム、アルギン酸Na、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースNa は、無添加と同程度の増加率であったため、アクネ菌に対する影響はないと考えられます。
また、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースは、低いレベルではありますが、アクネ菌に対し資化性を示しました。 更に、キサンタンガムは、アクネ菌に対し増殖を抑制することが考えられます。

今後の展開

現在、ニキビ用化粧品では、アクネ菌に対する殺菌効果や、患部への抗炎症効果によるアプローチが主流とされています。ただ、それを目的として発売されたニキビ用化粧品に、アクネ菌を増殖させてしまう成分が含まれていると目的を果たす事が困難になります。そのような事態を避けるためにも、化粧品の構成成分に関しアクネ菌の資化性を掌握し、資化性の乏しい、つまりニキビの原因と成り難い成分で処方する事で、すぐれたニキビ用化粧品の製造が可能となります。

今回の研究調査では保湿剤に続き、第二段階として水溶性高分子の資化性を報告しました。更に、界面活性剤、油脂類、脂肪酸など、化粧品の基材として使用される成分についても研究調査を続けています。