お問い合せはこちらから

梔子くちなしの植物レチノイド

 
ふるさと元気プロジェクト [医薬部外品表示名称:クチナシエキス]

真っ赤に熟した梔子くちなしが作り出すクロセチン
レチノイド様作用による肌全層ヒアルロン酸ケアでシワ改善

 梔子くちなしの植物レチノイド~2022.01.25

✔ 真っ赤に完熟する梔子くちなしが作り出す赤色素”クロセチン”
✔ 独自技術で抽出した活性型クロセチンがレチノイド様作用を発揮
✔ レチノール超え*の機能で肌全層ヒアルロン酸&コラーゲンケア
✔ 安定・安全な植物由来のシワ・毛穴・乾燥肌原料
  *ヒアルロン酸産生促進・MMP1産生抑制(本原料に含まれるクロセチン濃度において)

 


1. 期待される効果と有効性情報

期待される効果

シワ 保湿 毛穴 ニキビ

有効性情報

■シワ
シワ改善(臨床試験)
細胞賦活(真皮線維芽細胞増殖促進)
ヒアルロン酸産生(真皮ヒアルロン酸量)
ヒアルロン酸産生(HAS1生成促進)
ヒアルロン酸産生(HAS2生成促進)
コラーゲン産生(COL1生成促進)
コラーゲン保護(MMP1産生抑制)
コラーゲン保護(MMP1活性抑制)
エラスチン産生(ELN生成促進)

■保湿
水分量(臨床試験)
表皮ヒアルロン酸産生(HAS3生成促進)
コーニファイドエンベロープ成熟(TGM1生成促進)

■毛穴・ニキビ
毛穴改善(臨床試験)


 


2. シワ改善剤レチノイドの有用性と欠点

 
■ レチノイドの肌への有用性

「レチノイド」はビタミンA特有の生物活性を示す物質群で、ビタミンA誘導体(類似物質)とも称されます。

レチノイドの中で、レチノールは医薬部外品原料として、レチノイン酸は医薬品原料として使われています。レチノイン酸(トレチノイン)は、下図に示す様に肌に対して多くの強い生理作用を持ちます。

また、化粧品として利用可能なレチノールは、レチノイン酸より10~100倍生理作用が低いと言われているものの、抗シワ効果を期待して多くの化粧品に配合されています。
 

 
■ レチノイドの欠点 ~副作用と低安定性~

しかしレチノイドには、「レチノイド反応」と言われる副作用の問題があります(上図)。

レチノイン酸の前駆体であるレチノールにおいても、レチノイン酸ほど強力ではありませんが、皮膚に刺激を与え乾燥や赤み・皮剥け・痒みを誘発しやすく、このことが人々に抗シワ原料としてのレチノールを敬遠させる原因となっています。

また、レチノイン酸もレチノールも物質安定性が非常に悪く、特殊な容器や製剤への工夫、代替品となる誘導体の開発など、難しい対応が求められてきました。
 

そこで我々は、植物由来で安定・安全、かつレチノール以上の効果を発揮する(レチノイド様作用をもつ)化粧品原料の開発にチャレンジしてきました。

 


3. 植物の作り出すレチノイド様物質

3.1 アポカロテノイドとは?

光合成生物が作り出し、光エネルギーから自身を守るための脂溶性色素がカロテノイド。これは無極性のカロテン(βカロテンなどの炭化水素系)と極性のキサントフィル(ルテインやアスタキサンチンなどの酸化誘導体)に分けられます。いずれも植物由来成分としては生体親和性が高いことから、食品の三次機能物質として人類の健康にも貢献しています。

カロテノイドの代謝物としてアポカロテノイド(Apocarotenoid)という物質群も一部の植物には存在します。接頭辞「Apo-」はギリシア語語源で、「離れて」という意味を持ちます。アポカロテノイドはカロテノイドが切断されることにより生成することに由来しています。その多くが赤色の成分です。

植物性アポカロテノイドの多くがその特徴的な性質により産業利用されています。以下の様に、独特な色・香りにより美容業界での利用も多いことが分かります。

・ビキシン:ベニノキからは口紅にも使われる脂溶性のアナトー色素
・アポカロテナール:食品、医薬品、化粧品など産業用色素として利用
・イオノン:C13の精油成分で様々な香料の合成原料として利用
・ペリジニン:生化学試験用の蛍光色素分子として利用
・クロセチン:サフラン・クチナシの黄色素(植物では赤色)
 


3.2 レチノイドは赤色素アポカロテノイドの一種

レチノイドも赤色素で、実はアポカロテノイドの仲間です(*1)。βカロテン(プロビタミンA)は動物に摂取されると、カロテン鎖の真ん中で切断されてビタミンA(レチノール)へと変換され、さらに一部はホルモン物質であるレチノイン酸へと代謝されます。

*1: Apocarotenoids: Emerging roles in mammals
  EH Harrison and L Quadro. Annu Rev Nutr. 38 153–172 (2018)

 


3.3 βカロテンから植物自身が作りだすレチノイド様物質

 
自らカロテノイドを生成する植物でも、「レチノイド」そのものを作り出すことはできません。

そこで注目したのが、真っ赤に染まる一部の植物が作り出すアポカロテノイド(Non-レチノイド)です。ビタミンA(レチノイド)の生物活性は既によく知られていますが、Non-レチノイドとして分類される植物性アポカロテノイドにも多くの生理作用があることが明らかになってきています(*1)。

我々は、植物由来のアポカロテノイドにもレチノイド様の生物活性をもつ成分(植物性レチノイド)があるのではと考え、独自に研究を進めてきました。
 


4. 梔子(くちなし)が作り出す赤色素クロセチンはレチノイド様物質

4.1 梔子クロセチン:安全性と有効性を兼備した植物性レチノイド原料の開発

 
繰り返しになりますが、レチノールの一部は生体内でレチノイン酸に代謝され、ホルモン物質として強力な生理活性を発揮します。レチノイン酸はレチノールの約10~100倍の生理作用をもつと言われていますが、強い副作用も併せ持ちます。

数限られた植物性アポカロテノイドのなかでも、梔子(クチナシ)が作り出すクロセチンはレチノイン酸と同じC20-アポカロテノイドで、両成分には構造類似性があります。レチノイン酸の機能発現には「疎水性イソプレノイド+カルボン酸」の構造が重要といわれており(*)、クロセチンもこれに相当します。

梔子は、伝統的な食用色素として、日本最古(薬物辞典「本草和名」に収載)の漢方薬の原料として、長年に渡り活用されてきた有用植物です。また最近では、クロセチンの機能性の高さからサプリメント原料としても注目されています。

*: Retinoic acid actions through mammalian nuclear receptors
  P Huang et al. Chem Rev. 114 233–254 (2014)

 

以上のことから我々は、肌に対して高い安全性と有効性を兼ね備えた、梔子クロセチンを有効成分とする植物性レチノイド原料(レチノイド様作用)の開発を目指しました。

 


4.2 梔子のクロセチンは不活性型として存在 ~より赤くなるための生存戦略~

βカロテンの代謝物である脂溶性のゼアキサンチンなどは主にクロモプラスト(有色体)に貯蔵されます。これは柿などの植物果実でよく目にする黄~橙色の色素成分です。

一方、梔子はゼアキサンチンをさらに分解してクロセチンを作り出し、それを配糖体として水溶化することで、液胞内に大量に貯蔵しています。これにより、完熟した梔子果実は他のどの植物よりも赤くなることができます。この赤色は捕食動物のための果肉報酬のサインです。鳥は赤を強く認識し、種子を遠くまで被食散布します。このことは、クロセチンは動物に対して安全性の高い成分であるともいえます。

このように梔子果実では、クロセチンは高分子・配糖体(クロシン)として貯蔵されており、クロセチンの状態ではほとんど存在しません。すなわちレチノイド様物質としては不活性型であるという課題があります。
 


4.3 独自製法で「活性型クロセチン」を抽出

 
通常の抽出法では、梔子果実からはクロセチン配糖体が抽出されます(左図)。今回、化学薬品不使用※の抽出法を新たに開発し、クロセチン高含有エキスを得ることに成功しました(右図)。糖の付いていない遊離のクロセチンはレチノイド様作用が期待できる活性型クロセチンといえます。
※抽出溶媒として1,3-BG(サトウキビ由来)を使用

本原料を「梔子の植物レチノイド」と命名しました。なお、以下データ内表記は「梔子クロセチン」としています。

消化系を介さない化粧品利用を考えると、このように予め活性型に変換しておくことが重要です。一方、クロセチン配糖体(クロシン)は、漢方薬・食品として摂取した際は小腸で代謝されてクロセチンへと分解された後、吸収されることが分かっています(*)。

*: Orally administered crocetin and crocins are absorbed into blood plasma as crocetin and its glucuronide conjugates in mice
  A Asai et al. J Agric Food Chem. 53 7302-6 (2005)

 


5. 梔子クロセチンのレチノイド様作用① ~真皮細胞のヒアルロン酸産生~

5.1 真皮細胞の賦活・ヒアルロン酸産生~

<試験方法>
真皮線維芽細胞を24時間培養。その後、梔子クロセチン含有EMEMを加え48時間培養し、細胞数をMTT還元法で測定。ELISAでヒアルロン酸測定。遺伝子発現試験はRNA抽出よびcDNA合成した後、cDNAを用いてRT-qPCR
細胞試験濃度:1.5, 5 μg/mL;ヒアルロン酸測定:1.5, 5, 15 μg/mL;遺伝子試験濃度:0.5, 5 μg/mL;t-検定:†P<0.1, *P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001

<結果>
真皮線維芽細胞に梔子クロセチンを添加して培養することにより、細胞増殖が促進されました。

細胞賦活率 (108%, 110%)
 

<結果と考察>
真皮線維芽細胞に梔子クロセチンを添加して培養することにより、ヒアルロン酸産生量はコントロール品よりも濃度依存的に有意に促進されることが分かりました。さらに、本原料に含まれるクロセチンと同モル濃度に調製したレチノール(試薬)と比較すると、梔子クロセチン(本原料)はレチノールよりも有意に高い活性を示しました。

本原料「梔子の植物レチノイド」(図中表記、梔子クロセチン)には、真皮細胞のヒアルロン酸産生において”レチノール超え”の効果が確認されました。

ヒアルロン酸産生率 (101%, 114%, 117%)
 


5.2 真皮細胞のヒアルロン酸遺伝子発現~

 
<遺伝子の特徴>
HAS1,2(Hyaluronan synthase: ヒアルロン酸合成酵素)
真皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。真皮に存在する線維芽細胞に発現し、高分子のヒアルロン酸を作り出します。HAS1はHAS2よりも高分子のヒアルロン酸を産生します。ヒアルロン酸は肌の水分保持に関与し、肌にハリを与えてシワを防ぎます。
COL1(Collagen-1:1型コラーゲン)
真皮に存在する線維芽細胞から産生され、肌の弾力や強度に関与するコラーゲンの1つ。年齢と共にコラーゲンは減少・変性し、ハリ低下、シワ発生の原因となります。
ELN(Elastin:エラスチン)
肌の弾力を維持するために重要なタンパク質。コラーゲンと共に肌のハリの維持に関与します。真皮に存在する線維芽細胞から産生され、紫外線や加齢などにより減少・変質するとハリ低下やシワの原因となります。

<結果と考察>
梔子クロセチンはHAS1とHAS2、ならびにCOL1A1とELNの遺伝子発現を促進させました。このことから梔子クロセチンには、肌の弾力と水分を保持して、肌にハリを与える効果が期待できます。

レチノイン酸は真皮線維芽細胞増殖促進作用をもつこと(*1)、HAS2遺伝子は皮膚におけるレチノイン酸の主要な応答遺伝子であること(*2)、レチノイン酸はCOL1A1の発現を増強させることが知られています(*3)。これらのことから、梔子クロセチンはレチノイド様作用をもつ原料であるといえます。

発現率:HAS1 (140%, 122%), HAS2 (116%, 114%), COL1A1 (116%, 124%), ELN (110%, 102%)

*1: Retinoids and butyrate modulate fibroblast growth and contraction of collagen matrices
 RY Kim, WH Stern. Invest Ophthalmol Vis Sci. 31 1183-1186 (1990)
*2: The human hyaluronan synthase 2 gene is a primary retinoic acid and epidermal growth factor responding gene
 K Saavalainen et al. J Biol Chem. 280 14636-44 (2005)
*3: A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin
 R Kong et al. J Cosmet Dermatol. 15 49-57 (2015)

 


6. 梔子クロセチンのレチノイド様作用② ~表皮細胞のヒアルロン酸遺伝子~

<試験方法>
ヒト表皮角化細胞を24時間培養。その後、梔子クロセチン含有DMEMを加え48時間培養。
RNA抽出よびcDNA合成、cDNAを用いてRT-qPCR
試験濃度:50μg/mL **P<0.01, ***P<0.001

 

 
<遺伝子の特徴>
HAS3(Hyaluronan synthase-3: ヒアルロン酸合成酵素-3 )
表皮でのヒアルロン酸合成を担う酵素。HAS3の発現が増えることでヒアルロン酸産生が増加します。これにより表皮中のヒアルロン酸量が増加し、水分量が保たれ保湿機能が維持されます。
TGM1(Transglutaminase: トランスグルタミナーゼ)
肌のバリア機能に関わる「コーニファイドエンベロープ(Cornified envelope:CE)」の形成や成熟促進をする酵素。湿度が高い環境で活性が高まり、成熟したCEを生成します。CEの成熟は、肌のバリア機能や水分保持能の維持・向上に繋がります。

<結果と考察>
梔子クロセチンは表皮角化細胞において、HAS3とTGM1の遺伝子発現をそれぞれ促進させました。このことから梔子クロセチンには、肌のバリア機能を高め、肌の潤いを保つを効果が期待できます。

レチノイン酸は表皮細胞のHAS3遺伝子の発現を増強すること(*1)、ならびにTGM1の発現を増強させること(*2)が知られています。これらのことから表皮細胞においても、梔子クロセチンはレチノイド様作用の期待できる原料であるといえます。

発現率:HAS3 (126%), TGM1 (178%)

*1: All-trans retinoic acid-induced hyaluronan production and hyperplasia are partly mediated by EGFR signaling in epidermal keratinocytes
 SM Pasonen-Seppänen et al. J Invest Dermatol. 128 797-807 (2008)
*2: A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin
 R Kong et al. J Cosmet Dermatol. 15 49-57 (2015)


7. 梔子クロセチンのレチノイド様作用③ ~MMP1抑制~

<試験方法>
①MMP1タンパク質産生阻害:真皮線維芽細胞に過酸化水素を繰り返し処理し、老化モデル細胞とした。SA-β-galの染色により細胞老化を確認。通常細胞あるいは老化モデル細胞に検体を添加し、培養上清を回収してMMP1をELISAで測定
②MMP1活性阻害試験:ヒトリコンビナントMMP1と検体をインキュベートした後、基質と反応させ比色測定 †P<0.1, *P<0.05, **P<0.01, *** P<0.001

 

<結果と考察>

MMP1(マトリックスメタロプロテアーゼ-1)
肌に弾力性を与えてくれるコラーゲンを分解する酵素。紫外線により増加し、コラーゲンの分解を促進させます。また加齢や炎症によっても多く作られ、シワの形成やハリの低下に繋がります。

① MMP1タンパク質産生阻害試験:
本試験は真皮細胞によるMMP1タンパク質の産生量を定量したものです。梔子クロセチンは真皮線維芽細胞(通常細胞)においてMMP1タンパク質の産生を顕著に抑制しました。またこの時の阻害活性は、同モル濃度のレチノールよりも有意に高いことが示されました。

次に過酸化水素により誘導した老化モデル細胞を用いて評価しました。本条件での細胞への過酸化水素の添加は、MMP1タンパク質産生量を約5倍まで増加させました。ここに通常細胞試験と同濃度の梔子クロセチンを添加すると、2濃度において有意に阻害活性を示しました。
阻害率:通常細胞 (30%, 34%, 35%);老化モデル細胞(4%, 10%, 15%)

線維芽細胞に繰り返し過酸化水素を投与することで、細胞増殖能の低下や本データのように著しいMMP1産生の増大が見られます。この老化モデル細胞を用いることで、加齢状態を安定的に再現して抗老化作用を評価することができます。

② MMP1活性阻害試験:
本試験はヒトリコンビナントMMP1(ヒトのMMP1を作る遺伝子情報を元に作製された酵素タンパク質)を用いて酵素活性を測定したものです。コントロール(同一溶媒)のMMP1活性に対して、梔子クロセチンはMMP1活性を最大で18%抑制しました。一方、レチノールにはMMP1活性阻害作用はほとんど見られませんでした。

MMP1は紫外線により増加し、肌のコラーゲンの分解を促進する酵素です。レチノイン酸はこのMMP1の発現を抑制することで抗光老化作用を発揮することが知られています(*)。梔子クロセチンにはレチノールよりも強いMMP1産生阻害効果(MMP1酵素の産生量を抑える)に加えて、レチノールでは見られないMMP1活性阻害作用(MMP1酵素の活性を抑える)もあることが分かりました。

*: Photoaging therapy with topical tretinoin: an evidence-based analysis
  S Kang and JJ Voorhees. J Am Acad Dermatol. 39 55-61 (1998)

 


8. シワ・毛穴改善・保湿効果 ~臨床試験~

<試験方法>
左右半顔それぞれに試験品とプラセボを4週間、毎日朝晩洗顔後に塗布。試験前(初期値)と4週間後に、目尻から採取したレプリカのシワを三次元解析
被験者:日本人女性12名
試験品:5%「梔子の植物レチノイド」(梔子クロセチン)含有品、プラセボ
 

 
<結果と考察>
梔子クロセチンを4週間連用塗布することで、シワ面積率、シワ体積率、シワ個数、肌水分量、および毛穴面積が初期値に対して有意に改善されました。また、プラセボ塗布群との間にも各スコア(シワ最大幅と毛穴面積を除く)において有意な改善効果の差が見られました。

改善率(初期値→連用後):
面積率 48.8%;体積率 48.1%;個数 42.9%;最大幅 3.5%;水分量 45.6%;毛穴面積 24.2%
 


9. 梔子ならではの抗シワ作用にも期待 (文献情報より)

 
■ 抗炎症作用(消炎・解熱・鎮静)

梔子は生薬・漢方薬の原料(日本薬局方に収録)で、世界最古の薬学書「神農本草経」、日本最古(930年頃)の薬物辞典「本草和名」に収載されています。漢方では黄連解毒湯(おうれんげどくとう)が有名で、胃炎、口内炎、皮膚炎、皮膚のかゆみ、などの諸症に効果があるとされています。抗炎症作用以外にも止血・抗菌・精神安定・疲労回復・利尿・ストレス緩和・抗高脂血症などの効果があるといわれています。

*「山梔子(さんしし)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版 鈴木洋 179-180 (2011)
*「山梔子(サンシシ)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで 根本幸夫 54-55 (2016)
*Cui Y et al. Front Pharmacol. 10 180 (2019)

■ 筋弛緩作用(血流改善)

クロセチンは健康食品分野で今注目されている機能性素材です。体内への吸収性も高いと言われています。とくに、凝り固まった眼球の毛様体筋の緊張をほぐすことによる眼精疲労に効果があるとされています。筋肉の弛緩はクロセチンによる血流改善作用によるものと考えられています。

*クロセチン高含有クチナシ抽出物による眼精疲労改善効果 梶田雅義ら 視覚の科学 28 77-84 2007

肌の炎症はコラーゲンやエラスチンにダメージを与えシワの原因になり、筋肉が凝り固まると表情シワが定着します。梔子クロセチンにはレチノイド様作用の他に、抗炎症作用と表情筋弛緩作用によるシワ改善効果も期待できます。
 


10. 「梔子の植物レチノイド」(クロセチン)の抗シワ作用 ~まとめ~

 
  「梔子の植物レチノイド」:梔子クロセチンがレチノイド様作用を発揮
    ✔ 表皮細胞において保湿因子ヒアルロン酸産生を活性化、バリア因子も
    ✔ 真皮細胞においてハリ因子ヒアルロン酸産生を活性化、MMP1抑制も  
      
  「肌全層のヒアルロン酸とコラーゲンケアにより、肌にハリと潤いを与えてシワ改善」

   ※「レチノイド様作用/抗炎症作用/表情筋弛緩作用」によるトリプルアプローチにも期待
 


11. 光・熱安定性データ

 
梔子クロセチンの光安定性について、市販試薬のトランスレチノールとトランスレチノイン酸と比較しました。熱安定性は85℃で試験しました。梔子由来クロセチンは主成分であるトランス体のみをモニターしました。

各検体を95%メタノール溶液として等量を透明ガラスバイアルに入れ、蛍光灯下(36W白色蛍光灯2本、高さ180cm)、自然光露光下(窓際)に静置
※自然光条件としては、曇天が多く日光照射は実質3時間程度
LC分析条件:
カラム:ODS;移動相:MeOH/W (95:5);PDA:クロセチン@427nm、レチノール@325nm、レチノイン酸@355nm

1)蛍光灯下での安定性
レチノールとレチノイン酸は開始1日目で減少が見られ、1週間後ではそれぞれ79%と33%まで減少していた。一方梔子クロセチンは、1週間後もほとんど減少していなかった。

2)自然光下での安定性
レチノールとレチノイン酸は開始17時間目でそれぞれ25%と27%まで大きく減少した。一方梔子クロセチンはほとんど変化は見られなかった。(試験実施中曇天により日照時間は短かった)

3)加熱条件下での安定性
梔子クロセチンは、85℃3時間の加熱処理ではほとんど減少しなかった。
 


12. 梔子 ~素材へのこだわり~

12.1 梔子とは

・クチナシ(梔子、山梔子、支子、学名: Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木
・果実が熟しても割れないため、「口無し」が和名の由来(諸説あり)
・白い花は強い香りを放つ(日本三大香木の一つ:春の沈丁花、夏の梔子、秋の金木犀)

<色素として>
・奈良県の下池古墳から出土した繊維片からクチナシの色素成分が検出、古くは古墳時代にもさかのぼる 【繊維学会誌、第55巻第7号、1999年】
・果実は、古くは飛鳥・天平時代からから黄色の着色料として用いられてきた(今でもサツマイモや栗、和菓子、沢庵などで利用)

<郷土料理>
・大分県臼杵市郷土料理「黄飯」
 贅沢な赤飯の代わりにつくられたのが始まり。スペインパエリアを参考にしたとも 【出典:農林水産省Webサイト】
・静岡県藤枝市の瀬戸の染飯(そめいい)
 蒸した餅米をクチナシの実で黄色く染めて、磨り潰して乾燥させたもの
 江戸時代には、クチナシは足腰の疲れをとるとされて長旅に疲れた旅人たちから重宝された【参考:藤枝市公式サイト】

<薬として>
・中国最古(1~2世紀頃)の薬物書である神農本草経の中品に巵子(しし)として収録
・日本最古(930年頃)の植物名が記された薬物辞典の「本草和名」に久知奈之(くちなし)として収載
・完熟した乾燥果実は、生薬・漢方薬の原料(山梔子:さんしし)となり、日本薬局方にも収録
・効能としては消炎、解熱、鎮静、止血、黄疸や目の充血、喀血など
・疲労回復効果や防腐効果が高いことから、江戸時代には旅人が好んで食べていた

<産地など>
・国内に主要産地はないが、自生・庭木として関東以西で広くみられる
・昔から全国的に生産量は多くはなく、加えて中国産のクチナシ輸入や、人工着色料の普及の影響により需要は減ってきている
・伊豆大島では観賞用として栽培


12.2 ピカイチ素材 ~植物の力を最大に活かす~

 
梔子の作り出すクロセチン(クロセチン配糖体)は捕食動物のための果肉報酬のサインです。そのため、果実に含まれるクロセチン含有量は時期や部位により変動します。我々は、産地や収穫時期、部位別の分析を行い、クロセチンを得るための最適な素材を選定し、それを余すことなく使用しています。データはその一例で、収穫時期Bの果実全体のクロセチン量は収穫時期Aのそれの1.4倍になります。
 


12.3 本素材の産地

・大分市の農村集落で農薬を使わず自然栽培された梔子
・梔子は地元大分市や臼杵市などの伝統郷土料理「黄飯」の原料として受け継がれている
・地元の短期大学と連携して伝統の農作物と食文化の啓蒙に努めている
・伝統的な発酵食文化を持つ地域として臼杵市は2021年にユネスコ食文化創造都市に認定
 

以下の3枚の産地写真および文章は「大分県立芸術文化短期大学 情報コミュニケーション学科 ウェブサイト」より引用したものです。

同大学では、「学んだことを地域で活かす、地域で活動することで学びの意義を確かめる」ことを目的としたサービスラーニングという教育プログラムを進めています。

1月には、大分市のくちなし生産者である田中さん(本化粧品原料の素材生産者)協力の元、学生さんたちがくちなしの収穫支援活動に取り組みました。お昼には大分県の郷土料理「黄飯」にも触れました。

今回の活動を通じて、同地区での高齢化と過疎化の現状を理解するとともに、伝統的な農産品の活用などについても学習されています。


13. 原料情報(ふるさと元気プロジェクト)

原料情報
・原料名:梔子の植物レチノイド
・英語名:Gardenia Phyto-retinoid
・産地 :国産(主に大分県)
・表示名称:クチナシ果実エキス
・INCI: Gardenia Jasminoides Fruit Extract
・中文名称:栀子(GARDENIA JASMINOIDES)果提取物

安全性情報
・24時間閉塞パッチテスト:刺激性なし
・SIRC細胞を用いた眼刺激性試験:刺激性なし
・ROSアッセイによる光毒性試験:陰性
・スティンギングテスト:非刺激性

<SDGs(持続可能な開発目標)>
本原料はSDGs17目標169ターゲットのうち、以下の6目標13ターゲットの達成に貢献します。
 

※本資料の著作権は出典が明記されているものを除き、原則、株式会社サティス製薬に帰属します。目的と方法を問わず、本資料の一部または全部について無断で複写、複製、引用、転載、翻訳、貸与等を行うことを禁止します。本資料は原料技術資料であり、本資料で紹介している表現は、各種法律に違反しないことを何ら保証するものではありません。